2014年10月19日日曜日

[p.50] 完全競争市場とは

49ページから50ページにかけて、完全競争市場とはどのようなものかを説明しています。

まず完全競争市場とは、「取引に関する理想的な状況」であって、「注目している財・サービスが非常に円滑に取引されている状況のこと」だと述べた上で、具体的な前提条件として次の5個を挙げています。

1、その財・サービスを取引する市場が存在している。
2、その財・サービスについての情報を売り手と買い手の双方がそれなりによく知っている。
3、取引が相場の価格で行われている。
4、取引の際に必要となる手続きは、低コストで円滑に行われている。
5、その財・サービスの生産や消費に付随するすべての財・サービスについても市場が存在している。

それでは、なぜこの5つの条件が満たされていると、取引を円滑に行うことができるのでしょうか。

 まず売り手と買い手にとって、市場がなければ取引ができません。市場が存在していれば取引が容易に行えるでしょう(条件1)。
 また取引対象となる財・サービスの品質を取引当事者がよく分かっていなければ、取引時にその品質を確認することに時間とお金がかかると思われます。場合によっては、品質が分からなければ買い手は取引を諦めてしまうこともあるかもしれません。また、生産者側がその財・サービスを提供する際にどの程度の費用がかかるのを知らなければ、取引を行うことを躊躇するでしょう。これに対して必要な情報を持っていれば、安心して取引を行うことができます(条件2)。
 次に、取引を行う際に、売り手と買い手の間で価格交渉を行うことには、時間と手間がかかります。しかし、市場の相場の価格が決まっていれば、その価格で売るか否か、また買うか否かを決めればよいという意味で、容易に取引の判断を行うことができます(条件3)。
 このように取引の際に価格交渉をすることだけでなく、取引相手を探したり、相手に会うために移動したりすることに費用がかからなければ、それも取引を容易に行うことの助けとなります(条件4)。
 そして取引の影響が、当事者たちの間で完結していて、第三者に対して良い影響や悪い影響を与えることがなければ、他者による陳情やクレーム、介入を受けることなく取引を行うことができます(条件5)。

完全競争市場とは、あくまで取引を円滑に行うことができる理想的な状況です。現実の経済活動がこのように行われているわけではありません。しかし、このような理想的環境について考えてみることが、市場取引についての私たちの理解を助けてくれるのです。

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